蘭の「匍匐茎(ほふくけい)」のはなし ― 古い茎は切らないで

蘭を育て始めると、「なんだか横に広がっていくな」と気づくことがあります。

カトレアなどの蘭に見られる、匍匐茎(ほふくけい)による成長です。

匍匐茎ってなに?

匍匐茎は、地面や鉢の表面を横に這うように伸びる茎のことです。

カトレアでは、この匍匐茎から新しい芽を出し、少しずつ横へ横へと育っていきます。

去年の芽の隣に今年の芽、その隣に来年の芽。株が順番に並んで歩いていくような姿は、なんともかわいいものです。

左が古いバルブ、右が新しい芽。横に這う茎(匍匐茎)でつながっています。

カトレアの育ち方のイメージ。左の古いバルブから右の新しい芽まで、匍匐茎でつながっています。

パフィオペディラムも、見た目は少し違いますが、古い芽と新しい芽が根元でつながりながら株を大きくしていきます。

ちなみに身近な胡蝶蘭は、上へ上へと伸びていくタイプで、カトレアとは育ち方が違います。

バルブは水分や養分の貯蔵庫

カトレアでは、匍匐茎から立ち上がる茎が太くふくらんでいます。これをバルブ(偽球茎)と呼びます。

バルブには水分や養分がたくわえられていて、株にとっての貯金箱のような存在です。

新しい芽ができても、古いバルブの役割がすぐになくなるわけではありません。

葉が落ちたり、しわが寄ったりして見た目は元気がなくなっても、古いバルブにはまだ蓄えがあります。新しい芽は、こうした古い部分にも支えられながら育っていきます。

パフィオも、古い芽を大切に

パフィオペディラムには、カトレアのようなふくらんだバルブはありません。

それでも、古い芽と新しい芽はつながって、一つの株として育っています。

パフィオペディラムの株

たくさんの芽が別々に出ているように見えますが、土の中ではつながった一つの株です。

花が終わった古い芽や、少し葉が傷んだ芽を見ると、「もういらないのかな」と思ってしまうかもしれません。

でも、古い芽にも葉や根が残っていて、株の一部として働いています。

古いからといって、すぐに切り離す必要はありません。

むやみに株を分けない

これは、植え替えのときにも気をつけたいことです。

株が大きくなっていると、つい一芽ずつきれいに分けたくなることがあります。でも、株を分ければ、それまでつながっていた古い芽と新しい芽を切り離すことになります。

根をたくさん切れば株に負担がかかるのと同じように、細かく株を分けることも蘭にとっては負担になります。

特にまだ小さな株では、無理に分けず、ある程度まとまった株のまま育てたほうが安心です。

私の失敗談

なぜこの記事を書きたかったかというと、私自身が蘭を始めたころ、ここで失敗したからです。

カトレアやパフィオを植え替えるとき、古い部分がいらないもののように見えて、株をどんどん分けてしまいました。

古いバルブを切り離したり、パフィオも細かくばらしたり。

その結果、株は力を落とし、いくつか枯らしてしまいました。

もちろん根を傷めたことなど、ほかの原因もあったと思います。それでも、初期に株を枯らした大きな原因のひとつは、必要以上に株をばらしてしまったことだったと思っています。

知ってさえいれば、もっと残してあげられました。

古いバルブや古い芽は、時間とともに弱り、いずれ枯れていきます。これは株が育っていく中での自然な流れです。

でも、生きているうちは、古い部分も株の一部として、新しい芽を支えています。だから、まだ枯れきっていないうちは、なるべくつなげたままにしておくのがおすすめです。

完全に枯れてしまった部分や、腐ってしまった部分は取り除いてかまいません。でも、「古いから」「見た目が悪いから」という理由だけで、切ったり分けたりする必要はありません。

古い芽も、新しい芽とつながった一つの株です。

切りたくなると思いますが、まずはそのままで(笑)。

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